将来の夢へと続く学び将来の夢へと続く学び

物質生命化学科の野田雅人さんは、「科学分野を広く学びたい」との思いから、総合工学プログラムに入学し、工学分野それぞれのつながりを学んだことで、研究したい分野の理解も深まったと語る。3年次からは、植物の遺伝子研究に取り組み、解析で必要なPCRの技術を身に付けて、「遺伝子の謎を解き明かし、未来に残るような研究がしたい」と抱負を語る。

未知の分野の研究をしたいと飛び込んだ

高校生のときに神奈川大学のオープンキャンパスを訪れ、「総合工学プログラム」の存在を知りました。学科の枠にとらわれずに、工学全般に関する知識を基礎からしっかりと学んだうえで、専門分野を選んでいけるため、高校で化学以外の分野を学んでいなかった私にとっては、学科を決めて入学するよりも自分には向いていると感じました。

そして、入学の決め手となったのは、日本ではほとんど研究されていない、グミ科の「シーベリー」の品種改良や遺伝子の進化について研究している先生がいる、ということでした。シーベリーは、日本ではまだなじみが薄い小さな果樹ですが、ヨーロッパやロシアではよく食べられています。栄養価の高さから、最近注目されています。私は幼いころからモノづくりに興味があり、大学は工学部で学びたいと考えていましたが、こうした未開の分野の研究に携わることに魅力を感じたのです。

物質生命化学科で遺伝子の謎を読み解く

高校生のみなさんの中には、工学に興味があるものの、どの学科を選べばよいのかがわからない人がいるかもしれません。総合工学プログラムでは、1、2年次に工学分野のさまざまな科目を自由に選択し、分野の枠組みを越えて学ぶことができます。そして、それぞれの分野のつながりを理解し、身につけた知識が、工学を学ぶうえでのベースとなり、自分の本当に学びたいことを見極め、専門分野を探る糸口になるのです。

私自身は、総合工学プログラムで入学して、1年生の時に履修した授業で、遺伝子組み換え食品における世界の実状を知り、遺伝子を研究したいと思ったことから、物質生命化学科を選び、入学前から興味をもっていた朝倉研究室(植物遺伝育種学研究室)に入室しました。

しかし、ようやく研究に携われると楽しみにしていた矢先、新型コロナウイルス感染症の影響で、大学への入構制限がかかり、3年次は研究室で実際に手を動かして実験に取り組むことができませんでした。大学へ通えない日々を過ごすなかで、研究室の先輩たちが書いた論文を読んで、実験を行う時のイメージをつかんだり、概要を把握したりすることで、理解を深められるように努めてきました。また、先輩たちとはLINEを使って頻繁にコミュニケーションを取り、実験器具の使い方や実験技術、就職活動と研究の両立など、いろいろなことについて相談に乗ってもらっています。

PCR技術を身に付け、社会に役立てたい

これから取り組む卒業研究では、シーベリーの遺伝子を解析して、その植物がどのような進化をたどってきたのかを調べたり、品種改良に役立てたりしたいと考えています。日本でほとんど文献もない未開の分野の研究ですが、それだけにやりがいを感じています。将来、自分の研究の成果から、日本のあちこちでシーベリーを見かけられる日が来ることを夢見て、実験に取り組んでいこうと、今は気を引き締めているところです。

遺伝子の実験を進めるうえでは、「PCR」の技術が必要とされます。PCRは、新型コロウナウイルスの検査で有名になりましたが、実はさまざまなことに活用されている技術です。例えば、ある植物の遺伝子を調べるときに、一つの植物から取れる遺伝子は限られているため、その遺伝子を増幅するためにPCRの技術を使います。目的の遺伝子を複製して調べるということでいえば、PCRの原理は新型コロナウイルスの検査と同じだといえます。しかし、PCRの設定そのものが違っていると、目的の遺伝子以外のものが増えて、違う遺伝子を読み解いてしまうということもあります。

PCR技術は今後ますます注目が高くなっていくでしょう。これから始まる卒業研究での実験を通じてPCR技術を身に付け、卒業後はその技術力を生かしたスペシャリストとして活躍していきたいと考えています。

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